気づくと、定年を迎える年になっていました。長年、サイエンスの世界に没頭していたので、ラボクローズに向けた準備を進める中でも、なかなか実感が湧いてきませんでした。一方で、定年したら、まずは大阪に戻ることを考えていますので、理研をやめることに1ミリの迷いはありません。
 しかし、そうした中で、元研究室スタッフの前島くんが私の退官記念シンポジウムを提案して下さり(私自身は、自分のためのシンポなどは考えもしませんでしたし、そのための予算も頭の片隅にもありませんでした)、そのシンポジウムの企画を、前島くんをはじめとする多くの先生方が支えて下さっています。例えば、海外から来日して下さる招待演者の先生方は、所長やセンター長、ないしは、それに近いお立場の大変ご多忙な方ばかりなのですが、声をかけるとすぐに日程を確保し、しかも、自費で来日してシンポジウムに参加して下さいます。
 企画の方では、予算が少ないために、できるものはなるべく自作で準備して下さっています。理研と学術変革領域・ゲノムモダリティから、シンポジウムの共催も受けました。本当に、全ての方に心の底から感謝いたします。
 月並みな言葉ですが、私は、これまで、大変に幸運かつ幸福な研究者生活を送ることができました。ラボメンバー、同僚、先輩、国内と海外の研究仲間の多くに支えられてきました。今一番願うことは、現在のラボメンバーが私のラボクローズ後も、それぞれが活躍して自身が納得できる道を進み続けることです。
 私は定年して理研から離れますが、どこかで、皆さんとお会いする機会があるかもしれません。これからも、どうぞよろしくお願いいたします。

2023年8月
今本 尚子